ものぐさトミー|電気仕掛けの家に住む少年のどたばたオカルトコメディー絵本

ものぐさトミー 絵本
絵本

岩波書店から1977年に発刊された「ものぐさトミー」。作者はウィリアム・ペン・デュボアさんで、松岡享子さん翻訳です。全てが電気仕掛けの家に住むトミー少年が、停電を境にとんでもない状況に陥ります。どんな子どもでも抱腹絶倒!大笑いしながら何度でも読んでとせがんできます。一方大人は、ちょっと戦慄。トミー少年いったいキミは、停電なんてそんなこと以前に、なんでそんなことになっちゃっているんだ!? はげしくオススメです。

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作者はウィリアム・ペン・デュボア

ウィリアム・ペン・デュボアさんは、アメリカの児童文学作家。1916年生まれで、既に1993年に他界されています。名前で分かる通りフランス系の家庭に生まれ、フランスとアメリカを行き来する一生を送りました。

「海底二万里」や「八十日間世界一周」で有名なジュール・ヴェルヌさんの影響を強く受けており、奇想天外さと科学的整合性が両立した物語が特徴だといういうことです。
「ものぐさトミー」は確かにここに当てはまるような気がするけれど、整合性があるかどうかは???というところでしょう。笑

ちなみにアメリカで出版されたのは1966年で、原題は「Lazy Tommy Pumpkinhead」。レイジートミーパンプキンヘッド!
パンプキンヘッドというのは、「オツムが空っぽのバカ」くらいの意味なので、“ものぐさ”だけでは表現しきれていない気もしますね。

いずれにしろ、マシンやロボット、そして宇宙に対する憧れや夢がむくむくと膨れ上がっていた時代のど真ん中で、ここまで明確&徹底的に機械化は悪と断罪してのけているのはすごいです。
例えば、超名作「スタートレック」の放映開始がちょうど1966年ですね。こちらも必見。

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「ものぐさトミー」あらすじ紹介

ものぐさトミー

Amazon掲載の内容を紹介します。

電気じかけの家に住んでいるなまけもののトミー。朝ベッドから起きてから夜眠るまですべて機械じかけ。ところがある嵐の日、停電になって……。

Amazon商品紹介ページから転載

朝起きてから、お風呂、身支度、(大量の)朝ごはんまで、まったく自分で動くことなすませてくれる、ある種完全なスマートハウスに暮らすトミー。
だったら最後の階段もエスカレーターにしてくれよと突っ込みたくなりますが、そうしてしまうと一日やることがなくなってしまうということなのでしょうか。

そして停電の日、ひょんなことからいつもと逆向きになってしまったトミーは、完璧なはずだった機械に弄ばれ、蹂躙されます。途中何度か、「死にたい。死ぬんだ」と思うくらいにです。

ココノチチ<br>
ココノチチ

でも、苦しみ悶えるトミーを見ながら、子どもたちは大受け。

「人が苦しんでいるのは楽しい」という感情は、とても本能的な感情なんだなーとしみじみ思います。それがいいか悪いかは、別の問題。

死線をくぐりぬけたトミーはようやく気がつきます。

こんな生活をずっと続けていてはダメ

おそらくトミーはきっかけを探していただけで、とうの昔にこんな生活がダメだということに気がついていたのでしょう。

「おしまい」の前に、新たな生活へと一歩踏み出したトミーを讃えたい。おめでとうトミー!

ものぐさトミー

なぜトミーは、こんな家に一人で住んでいるのか

ものぐさトミー

子どもにとってはおもしろおかしい絵本ですが、大人にとってはなぜトミーがこんな家に住むにいたったのかといのが最大の疑問。笑

  • お父さんとお母さんはどこいった?
  • 近所付き合いなどもまったくない?
  • 昼夜食べずにずっと階段登ってる?
  • 毎日同じの食べててあきない?
  • そもそも着替え必要あるかな?

私の想像は、こうです。

不慮の事故で両親をはじめ、親類縁者をことごとく亡くしてしまったトミー。残ったのは莫大な遺産。
生きる気力をなくしてしまったトミーは、人里離れたまったく知り合いがいない土地にテクノロジーの粋を集めた電気仕掛けの家を作って閉じこもることにした。

そう、トミー少年は深く傷ついていたのです。

どのくらいの期間この生活を続けていたのかはわかりませんが、それでもトミーは気がつきました。このままではダメだと。

そんなトミーの“これから”を、応援せずにはいられません。心からのエールを送ろうじゃありませんか。

そして、裏表紙のノコギリの意味は?

ものぐさトミー

とても気になるのが、裏表紙に描かれたノコギリの絵です。太い丸太をギコギコ切っている最中のノコギリから、ZZZZZZZZZZZZZZZZという音が出ています。

これはなんのメタファーなのか。それともメタファーではないのか。いくら考えてもわかりません。。。

「ものぐさトミー」の対象年齢

はじめに読んであげるのは、2歳〜かと思います。2〜4歳くらいまでは、いつ読んでも何回読んでも大爆笑。特に夜寝る前に読むのがオススメ。それなりに長いし大笑いできるので、一冊でも子どもの満足感が高いです。

そして2回目の適齢期。小学校の中学年くらい(9〜10歳)で読むのもよいと思います。小さいころとはまた違ったことを感じられるのではないでしょうか。

もちろん我が家の蔵書です。

書誌データ

発行元 岩波書店 ※公式サイト
発行日 1977年6月24日
価 格 880円